さるすべりがここからでも紅い ような恵のコラム 甘夏ためつすがめつ31こめ

ある朝、ベッドの中で、虫に変わっていた*

 

「あれは、まさに文学だった」と店長は言った。

そうなのである。

フランツ・カフカを知っていて、あの気持ちの悪い虫の話を思い出せない人はいない。

 

わずかな光が言葉を通して洩れてくる

 

カフカの多くの作品は未完で、その断片的な言葉たちは確かに光を帯びている。

完成されなかったということは、カフカにとってひとつの結びの形であったのかもしれない。

その一瞬の閃光のために時々、私たちはおろかにすべてを賭けてしまう。

 

人間の体のくっきりとした輪郭が怖ろしい

 

俳句っていったい、何だろうか。

 

巻末の対談で、九堂夜想の『世界一読むことに時間のかかる詩だと思っています』という言葉にはっとする。

 

私はまた分かったつもりになっているらしい。

 

 

あなたの日々を深く

本当に生きているあなた

 

幸せになることがこわい。

とってもよく分かる。

よく分かると思ってしまうのがかなしい。

私たちは臆病だ。それを認めることだって、私は何年もかかってしまった···と言いたいけれど、ほんとうは認められているかもあやしい。

 

おまえは宿題。生徒はどこにもいない

 

俳句とはまるで、古傷を突かれているような気持ちになる。

見てほしくない、見られたくないものは、例えば芸術においては美しい。

 

朝起きるたび気づく私は立体 ような恵

 

絶望だって、たまには悪くないのである。

ちゃんと絶望できることは、強い。

 

*『変身』より(中略・句読点 頭木弘樹氏)