ジョセフ・ナジ振付・出演『カラス/Les Corbeaux』  &_m

 

 

カッ

と大きくひろげた羽の先まで

満ち満ちた存在感。

 

身体を通して、イメージは、存在となり降り立った。

 

コンテンポラリーダンスの公演を観に行くのは初めて。

ピナ・バウシュの映画が公開になることを知り、興味をもった。

コンテンポラリーダンスは、演劇ではなく、

モダンダンスではなく、バレエではなく…

明確な定義はないらしい。言葉だけではなんともわかりづらい。

百聞は一見に如かず。ひとまず体験してみようと勇んででかけた。

 

幕が開ける。

暗闇。空気はぴんと張りつめている。

木管楽器の甲高い音が響く。時折吹きながら叫び、

叫びながら吹き、穏やかならない気持ちがする。

 

静かに、絵のシーンが始まる。

線のような、図形のような、黒いインクで描かれる形象が踊る。

続いて砂と缶のシーン。

天井から落ちてくる砂と、ガムランのような音楽が絡み合う。

そして、身体のシーン。

伸ばす、ころがる、ねそべる。

はじめは身体そのままで、

やがて、鼻、てのひら、少しずつ黒いインクに染まり、

全身、黒になる。

 

つややかに光る。カッと羽を開く。

神々しさすら感じる。

 

なにもない場に現れた黒の存在感は、圧倒的で、

私は、全身でその存在と対峙する。

 

ステージにあらわされていたのは、

ごみを荒らす厄介なカラスとはまったく違う姿。

公演後のアフタートークで、ジョセフ・ナジは、

「カラスはハンガリーでは知恵のシンボルであり、

長寿のシンボルでもある」と語っていた。

今までに知ることのなかった、ひとつの、神話的存在をみた。

 

『カラス/Les Corbeaux』は現在全国巡回中。

3月9日(金)、10日(土)富士見市民文化会館キラリ☆ふじみでの公演がラストチャンス。

 

ピナバウシュの映画は現在順次公開中。

 

 

参考

 

※ウェブページのリンクは2012年3月5日現在

 

ジョセフ・ナジ振付・出演『カラス/Les Corbeaux』 | 世田谷パブリックシアター/シアタートラム

http://setagaya-pt.jp/theater_info/2012/02/les_corbeaux.html

 

乗越 たかお『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイド HYPER』

(コンテンポラリーダンスの定義については、本書8ページを参照しました。)

 

富士見市民文化会館 キラリ☆ふじみ

http://www.kirari-fujimi.com/

 

映画『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』公式サイト

http://pina.gaga.ne.jp/